2016年2月15日月曜日

インセンティブ制はなぜうまくいかないことがあるのか。カンボジアではどうか。プノンペンではどうか。

スポークを細かく切り抜く自転車・バイク画像切り抜きのポイントを、社内でのみ2倍にすることを、今日、カンボジア大六の全社員に発表しました。

日本の市場の趨勢により、この「スポークを細かく自転車・バイク画像切り抜き」はだいぶ安売りになってしまっています。
市場を社員に感じてもらうため、当社では原則として、売価をそのまま作業者のポイントとし、ひいてはその月の実績給に比例させています。
が、この「スポークを~」については、大変な割にポイントが少ない……と、以前から社員たちのひそかな不満の筆頭に挙げられていました。

お客さんへの売価は以前と同じですので、社員の給料が上がる差額は、カンボジア大六が会社として負担することになります。
当社は廣田の個人商店ですので、私や社員たちの体感としては「廣田の財布から負担することになります」に99%近いです。
大きい組織だと、支出を決めるときに、担当部署のトップも、会計部も、「でも自分のお金ではないし」という感じがあると思います。
そのぶん感情的に、大胆な施策を行いやすかったり、逆に遠慮して、行いにくかったりします。
ここは個人商店の強みでもあり弱みでもあると思います。



今日はもう一つ、各月について、社員が充分稼いだら、それより多く作業した分については、実績給のレートを3倍にする、という新施策も発表しています。
社員の固定給や社員ひとりあたりの会社の固定コストをカバーして、損益分岐点を超えた部分については、がんばった社員に還元するよ、ということです。
これまでその余剰収益は、おおざっぱに言って、がんばらなかった者の穴埋めに使われてしまっていました。
お役所ならそれでいいと思います。煽りでなく、お役所にはそういう役も必要です。ていうかぶっちゃけ、お役所そのものがコストセンターです。
企業はもちろん、この世に価値を追加することが仕事ですので、コストを自己増殖させるしくみを徹底してつぶさねばなりません。
がんばっている社員が馬鹿を見るような会社であってはならないのです。

インセンティブ制については、賛否両論がつねにあります。
子供の教育でも、米国で、結果に報いるインセンティブはうまくいかず、行動に報いるインセンティブがうまくいくという学術的実験結果が明白に出ています。
たとえば、営業職の人にノルマを課すような施策は、中長期的にはうまくいかないと思います。

ウチは、生産量という結果を一見測っていますが、職種が単純作業ですので、がんばって作業すれば生産量は比例的に増えていくことから、実質、行動を測っているのと同じです。

日系企業が中国に進出して店を開いたとき、店員のコアなコンピテンシ項目を洗い出し、それを実行することで店員にボーナスを与えたところ、非常にうまくいったという事例を読んだことがあります(『中国人をやる気にさせる人材マネジメント』)。
売り上げに基づくインセンティブを店員に与えてしまうと、ちょっと考えただけでも、さまざまな弊害が生じるわけです。お客さんによっては、二度と行きたくないお店になってしまうおそれが充分にあります。
これはたぶんカンボジアでも通じる話だし、アジアどこでも通じることだと思います。日本でも通じるんではないでしょうか。

ただ、中国は地方によって気質がまったく異なるし、カンボジア人の気質もまたベトナム人とは大きく異なります。
ベトナムもまた地方によって大きく異なっており、南部人のドライで敵対的な対人関係に慣れていた私は、ダナンに赴任した当初、ダナンの人を引かせてしまったことがあります。
カンボジア人の気質はいろんな意味で、日本の東北に近いと感じています。

したがってインセンティブについても、中国や南ベトナムで使うようなギラギラしたものはカンボジアではかえって逆効果と考えています。
原則としてグループインセンティブを用いています。

もっと細かいことをいえば、カンボジアのプノンペンに当社は立地しており、社員の多くは田舎からポッと出ではなく、プノンペンっ子です。カンボジアの田舎の人は、そもそも対人関係というある意味他人行儀なものを、スキルとして教えられておりません。労働と成果に関する考え方も、西洋的なものをまったく受け付けないように見えます。したがって、田舎出を多く使うとか、田舎に立地するとかなら、また全然違うようにしなければいけないことは、火を見るより明らかです。西洋的思想にどっぷりつかってきた理系かつプログラマーの私は正直、そこはものすごく二の足を踏んでしまいます。
ですのでウチの生産拠点とリクルート先はまだ、プノンペンにひきこもっております。


カンボジア大六の社内の様子


会社の制度設計は、大枠を最初に決めたらそれを崩さないことが大事だと思っていますが、しかし詳細については、どんどんチューンナップしていく勇気と勤勉さが、経営側に求められると思っています。
最近そこをサボっていましたので、今日はひさびさにちょっと動きを見せてみました。
どう出るか、来月度の結果が楽しみです。





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