2014年8月1日金曜日

全世界のクールジャパン派の99%を突如完全に敵に回した日本政府世紀の愚策

日本政府が全世界のアニメ海賊版サイトの閉鎖に乗り出すとする発表を受けて、facebook上には海外アニメファンたちの悲鳴があふれている。
カンボジアのアニメファンたちも例外ではない。

下図のサイト群が日本政府によって閉鎖されるという情報がfacebook上で急速に拡散しており、多くのコメントがついている。
コメントのほとんどは日本政府の決定を悲しむものだ。


フィリピンではアニメファン数千人が日本大使館前で抗議を行なった。[2014/8/2 22:24 追記]ジョークサイトであるとのご指摘をコメントでいただきました。

もちろん、法的には知的所有権(著作権)の保護ということがある。
しかし現実には、とくに東南アジアをはじめとする途上国のアニメファンはそんなにお金を持っていないので、こうしたサイトを閉鎖して「公式」サイトに一本化されてしまえば、その対価を払う資力はない。
大好きなアニメへのアクセスを遮断されてしまうのだ。
その恨みは当然日本政府へ向かう。

そして彼らにとっては幸いなことに、現実的にはこんにち、データはどのような防衛手段を取っても必ず複製されてしまう。

.torrentを集めたWebサイトの閉鎖を実現したところで、.torrentそのものをもP2Pで共有すればいいだけであり、ほぼ意味はない。

結局アニメの無料共有は続くのであり、そして残るのは、アニメファンから日本政府への恨みだけである。
日本政府は、口ではクールジャパンなどと言って日本のコンテンツを世界に広めようと言いながら、実際にやっていることは、世界のアニメファンの99%からアニメへのアクセスを奪い、新たなアニメファンが生まれる芽をもつんでいることにほかならない体となってしまうのだ。

このことを音楽業界はこの10年~15年間ですでに学びきっている。
『フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略』には、このような新状況に対応したミュージシャンたちの生計の立て方が紹介されている。
それは、音楽CDで儲けるのでなく、むしろ音楽CDはどんどん複製してもらって、できるだけ多くのひとに自分らの作品にどんどん触れてもらって、ファンが増えた状態で、満を持してコンサートを開き、そのチケット収入やグッズ収入で食っていくというものだ。
日本でも現在では、AKB48をはじめ多くのアーティストがこの方法を採用している。
AKB48はYouTube上に公式チャンネルを作り、MVを無料で拡散している。
そうして増えたファンをコンサートへ呼び込み、そのチケット代やグッズ代(握手権・投票権の同梱されたCD等を含む)で稼ぐしくみだ。

知識人も同様だ。
彼らが本を書くのは、その印税で食っていこうとしているのではない。
それによって得た知名度をもとに、講演に呼ばれたり、コンサルやコーチをやったりして、その対価を釣り上げるために、本を手段として名声を高めるのだ。
その証拠に、発売後しばらくしたら、その本の内容をまるごと無償でPDF形式などで自分のサイトに掲載していたりする。

ほとんどすべてのネット上のサービスもそうだ。
Googleはじめとして多くのサイトは、ライトなユーザーからはカネを取らない。
無料で人を寄せ集めておいて、ファンになってもらい、コアなユーザーになった客だけから、カネを取るのだ。
ネットゲームもそうだ。
フリーミアムというわけだ。

彼らがこれをできるのは、物でなくサービスを売っているからである。
サービスはただコピーすればよい。
ユーザーが一人増えたら、電子的なテンプレート(技術的には、ディスクファイルディレクトリや、データベースレコード)をそのユーザー用に1個コピーすることによって、そのユーザー用の仮想空間を作りさえすればよいのだ。
物を1個増やすことに比べ、あまりコストがかからない。

これは音楽やアニメなどのコンテンツにもあてはまることだ。
コストがかかっているのは創作の部分であって、複製にかかるコストはそれに比べてほぼゼロである。
複製からカネを取ろうとするのは、媒体がレコードやテープやディスクしかなかった時代における、本来中間搾取にほかならないのである。

Googleにあなたお金払ってますか?
あなたGoogle使ってるでしょう?
Google使いながらGoogleにお金払ってないひとには、無償でアニメが見れないといって悲しんでいる海外アニメファンたちをわらう資格はない。

このようなやり方をなぜアニメ業界が採ることができないのか。
今回の決定を下した日本政府の役人や、それに影響を与えた既得権を持つ人々は、音楽業界のたどった道に何も学ばなかったのか。
現代の知識人たちの生き方に何も学んでいないのか。
インターネットにさわったことがないのか。
あいかわらずの20世紀脳なのか。
なんという損失であろうか。

余談だが、日本政府がコンテンツの一本化管理を図るこの有料「公式」サイトには、Tokyo Otaku Modeというネット通販業者がからんでいるらしい。
この会社は今年3月、絵師100人展というものをベトナムで開催したが、10万ドン(約5ドル)というバカ高い入場料で、内容はただ絵が展示されているだけで、ほぼ入場者ゼロで大コケしたという。

この有料「公式」サイトは、すでに開設されているはずだが、私が現在滞在しているホーチミン市から、当地時間2014年8月1日午前8:50現在、なぜかアクセスできない。

日本政府の今回の世紀の愚策により、クールジャパンは滅び、海外アニメ熱は一部マニアを除き急速に冷え込み、関連ビジネスは蹉跌するだろう。
その空白を韓流コンテンツが埋めるだろう。
さようならクールジャパン
さようならジャパニメーション